令和5年度末に卒業を控える日光市地域おこし協力隊の3名、竹嶋隊員・橋本隊員・林隊員。
現在も担当地域を中心に忙しく活動されている中、これまでの活動や今後について、語っていただきました。
これからも応援をよろしくお願いします(令和5年8月取材)。
<目次>
↓ 三依地区 竹嶋隊員「やりたいことを受け入れてくれた地域で卒業後も活動したい」 ↓ 足尾地域 橋本隊員「お願いされたらまず”イエス” 地域と地域をつなぐ営業マン」 ↓ 栗山地域 林隊員「伝統民芸を次世代へ ネット販売など新たな挑戦も」 |
三依地区 竹嶋隊員
活動テーマ:鳥獣被害防止活動
主な業務:「イノシシやシカ等の鳥獣被害防止活動」「農林活動(花畑や牧場の補助)」ほか
「狩猟がしたい」私を受け入れてくれた場所
14年勤めた飲食業を退職後、ジビエ料理が好きだったことも影響し、「狩猟がしてみたい」と仕事を探していました。
なかなか見つからず苦労していた中、唯一温かく受け入れていただいたのが「鳥獣被害防止活動」としての協力隊を募集していた三依地区でした。
協力隊応募時の現地見学会では、後に同僚となる先輩隊員や自治会長から「一緒にやろう」「狩猟のことは何でも教える」という心強い言葉がありました。
普通、 “よそ者”が狩猟をやることは、なかなか全員に受け入れてもらえることではないと思います。
でも三依ではマイナスの声は一度も聞きません。
害獣駆除を報告すれば「よくやった。もっとがんばれよ」と励ましてもらえます。
そういった風土が心地よく、活動初年度から定住を考えるようになりました。
経験ゼロから、仲間に支えられ積み上げた経験
協力隊着任前に免許だけは取得していましたが、害獣の駆除や解体処理など実践的な狩猟ははじめてのことでした。
ナイフなどの専用の道具すら持っておらず、YouTubeでやり方を調べたり、手伝ってくれる地元の仲間たちと「この辺に罠を仕掛けようか」など、試行錯誤が続きました。
成果が出たら「今日はお祝いだ」と盛り上がります。
(害獣の解体処理である)皮剥ぎ作業は、今では2人で1時間もかかりません。
でもはじめての時は2人で作業して、朝から晩までやっていたのは今では笑い話ですね。
現在は市外から獣害対策の研修などで、講話を依頼されることもあります。
まずは家探し。卒業後も地域に関わることが第一優先
遠目から見ているだけなら輪には入れなかったけれど、自ら率先して入ってみれば、やりたいことをみんなで盛り上げてくれるのが三依です。
そういう環境だったからこそ、今まで活動できました。
卒業後は三依で働くか、別の場所に働きに出るか、どちらにしても三依に関われなければ意味がないと思っています。
そのためにはまず三依に住居が必要で、今探しているところです。
チャレンジの結果、失敗してもいいと思っています。
定住に向け、新しいプロジェクトにも挑戦中です。
ストレスが溜まっても「飲もうよ」とすぐに誘ってくれる仲間がいてラッキーでした。
足尾地域 橋本隊員
活動テーマ:観光振興による関係人口の創出
主な業務:「体験型観光イベントの実施」「SNSなどを活用した情報発信」ほか
就活中にコロナ禍、不安ながらも起業を目指す
大学4年の就職活動中にコロナ禍になり、予定していた企業説明会もなくなってしまいました。
この先どうすればいいのか将来に不安を抱えていた頃、起業の可能性がある協力隊を知ります。
いくつかの候補地がある中で、起業支援金などの制度が充実した日光市の協力隊を選び、着任しました。
社会人経験が少なく、思うようなかたちにならず苦しい経験も多かったですが、初年度に定住を意識したのは「心の安定」を得られたからかもしれません。
「助けていただいた」だけでは言い尽くせないほど、お世話になった方たちが足尾にいます。
じっとしていたら何も変わらない・・・ 関係づくりへ動き続ける
小さな地域は1つではやっていけず、他の地域との助けあいが必要です。
ないものばかりだから、何でもやる気持ちで、イベント・SNS・動画作成など、はじめてのことにも積極的に挑戦しました。
自ら動き、何かお願いされたらまずは”イエス”で、何でもやってみる。
ときには休みも返上して動き、やったことはSNSで報告する。
結果、さまざまな地域の方とつながれました。
とくに近隣の「群馬県みどり市」の方々とつながったのは、活動が広がるポイントになりましたね。
今では自己紹介する際に「足尾の営業マンです」と話すこともあります。
ワークショップを中心とした体験型観光イベントは、昨年度は10回以上実施しました。
連携した組織も10団体以上。
回を重ねるうちに、主催者側とお客さまの求めるものにズレが起きてしまう問題や、イベントはやりっぱなしでなく、見直しを続けないとよくならないことも学びました。
心が躍る活動拠点で、膨らむ夢
自宅と職場以外の”第3の居場所”が欲しいと、空き店舗だった建物を改修し「NAORI DOCK(ナオリ ドック)」という活動拠点を作りました。
Barのような出逢いの場が少ない地域で、まずは自分の心が踊るスペースを考えたのです。
今後はより多くの方に喜んでいただくため、飲食や宿泊ができる施設を目指し、計画を練っています。
協力隊卒業後も足尾でがんばります。
知り合いの営業マンから「営業やりなよ」と勧められました。
栗山地域 林隊員
活動テーマ:地域の伝統を守り育てる
主な業務:「岩芝民芸の技術継承」「伝統野菜の普及」ほか
おもしろい人生にしたいと協力隊に 「岩芝(いわしば)民芸」との出逢い
前職もやりがいはありましたが、さらにおもしろいことにチャレンジしたいと、協力隊に応募しました。
自然豊かな場所が好きで日光市にも馴染みがあり、活動前と実際のイメージのギャップはあまりなかったです。
協力隊の現地見学会の際に出逢ったのが「イジッコ」と呼ばれる岩芝民芸(岩芝という植物を使った民芸品)です。
民具が好きで自分で作った経験もあるくらいでしたが、”実物”を見たとき「どうやって編んでいるのかわからない」と、その細かさに驚き、魅力に思えました。
情報も材料もない苦労も「やるからには本気にやる」
活動する栗山地域は、都会と比べ昔の生活様式が多く残り、民具など身の回りのものを自分で作った経験のある方がたくさんいます。
そのため時代により消えゆく技術を、少しでも残したい気持ちがありました。
そして岩芝民芸の職人(師匠)が活動地に住んでいたこともあり、初年度に活動テーマを「伝統民芸の技術継承」と決めます。
でも最初は、材料の岩芝が年々採れなくなっている課題に直面し、苦労しましたね。
材料探しは山の中などで行うこともあり、職員の方に心配されることもありました。
活動4年目になって、同じ編み技術が残る福島県へ技術を学びに通ったことで、視野が一気に広がります。
岩芝の代わりになる自然素材の採り方や、いろいろな編み方、表現方法なども覚えました。
これまでは作りたい人がいても、材料がなく編み方も細かすぎて作れませんでした。
今は材料も編み方も情報も増えて、作りたい人が難易度に合わせてチャレンジできる環境ができつつあります。
ずっとかけぬけてきて、胸を張って言えること
どうにか4年かけて、やっとここまで形にできました。
今は胸を張って「岩芝民芸はより身近なものになった」と言えます。
これからは販売にもつなげていきたいです。
伝統民芸品は各地で作られ似ているものもある中、私はこの地域にしかないデザインを大切に考えています。
地元の素材と技術で、イジッコなど昔ながらのバッグだけでなく、アクセサリーをはじめとした小物も作っていきたいです。
今は作業場としての工房を探しています。
岩芝の勉強を続けていたら、最終的に”繊維とは?”に行きつきました。